大学概要【2023年度実施分】刑事施設の社会的役割や受刑者の処遇等に関する学習プログラム

法学部

刑事施設の社会的役割や受刑者の処遇等に関する学習プログラム
実施責任者:萩野 貴史

このプログラムでは、各種の刑務所等の果たす社会的な役割や実際の取組みに関する(事前?事後)学習や実際の参観を通じて、刑事施設や刑罰に関する知識を深めていきます。このプログラムを通じて学年を超えたつながりを構築するとともに、現在の日本が抱えるさまざまな社会問題への関心を養うことや、将来の進路の選択肢の幅を広げることも目的の1つです。

ACTIVITY

刑事施設の意義?刑務官の職務内容に関する特別講義

2023/07/25

 7月21日の4限(14時50分~16時20分)に、矯正研修所名古屋支所の教官である浜野達介先生を講師としてお招きして、特別講義を開催しました。
 この特別講義では、そもそも刑務官になるためにはどういった試験に合格する必要があるか、刑務官の職務内容としてどういったものがあるか、職務にあたって何に注意する必要があるかといった点などから、刑事施設が我々の社会においてどのような意義をもっているかという点まで丁寧に解説していただきました。講義中に参照した刑事収容施設法は、刑事政策の講義などを除くと、普段の授業で目にする機会があまりありませんので、法学の授業としても貴重な内容でした。
 また、当プログラムでは今後刑務所見学を予定していますが、そのための予備知識として有用な内容も盛り込んでいただきました。たとえば、刑務所見学の際に「保護室」や「受刑者の食事」の話題が出た場合のために、保護室の具体的な造りやどういった受刑者がそこに収容されるかについて、あるいは受刑者の食事が1日どのくらいの予算で作られているかといった点についても知ることができました。見学に向けてモチベーションが高まったと思います。
 講義の後には質疑応答の時間が設けられました。私たちが普段疑問に感じたとしても、なかなか解消する場がない質問が、参加者から数多く投げかけられました。たとえば、「刑務官として働いていて生命の危険を感じたことはあるか。」、「受刑者から、『悪のささやき』のような働きかけはあるか」、「日常生活の中で、元受刑者の方と偶然出くわすようなことはあるか」といった質問などです。こうした素朴な質問に対しても、浜野先生は、実体験や笑い話も交えながら1つ1つ丁寧に答えてくださりました。
 当初予定していた時間を延長するほどの講義でしたので、参加者それぞれにとって有意義な時間になったと思います。

特別講義の様子①(浜野先生)

特別講義の様子②(刑務官に関する説明)

特別講義の様子③(刑務所の食事に関する説明)

岐阜刑務所見学

2023/09/14

 9月13日(水)に、岐阜刑務所を見学しました。
 見学ではまず、会議室で30分ほど施設の概要や見学にあたっての注意事項を説明していただき、岐阜刑務所に関する理解を深めました。
 その後、受刑者が収容されている区画に実際に足を踏み入れ、さまざまな施設や設備について解説していただきました。受刑者が作業に取り組んでいる様子や実際の共同室?単独室だけでなく、面会室や調室、保護室なども見学することができました。
 区画を一通り見学した後は、再び会議室に戻り、質疑応答と講義(法教育の一環)の時間をとっていただきました。質疑応答では、見学中に気になった点に関する質問などにひとつひとつ丁寧に答えていただきました。また、講義は、旧監獄法と刑事収容施設法における文言の変化から現場で行刑がどのように変わったかなど、普段の授業ではなかなか味わえない“臨場感ある”内容でした。
 今回の見学では、参加者ひとりひとりが、今後の学びに役立つ貴重な体験をすることができたと思います。

集合写真(岐阜刑務所表門前)

説明?講義を受講する様子(岐阜刑務所会議室)

愛知少年院見学

2023/11/29

 11月29日(水)に、愛知少年院を見学しました。
 見学ではまず、会議室で1時間ほど少年院全般や愛知少年院について説明していただきました。実際に少年院で取り組んでいる矯正教育の内容や、収容されている少年について(人数?非行内容)など、多くのことを学ぶことができました。
 その後、少年たちが収容されている区画を実際に見学させていただきました。単に歩きながら説明を受けるというのではなく、空室に立ち入らせていただく?時には実際に触れさせていただくなど、普段はできない体験を数多くさせていただきました。また、愛知少年院で教育に取り入れている「パートナードッグ」(犬)にも会うことができました。この「パートナードッグ」の世話を通じて、少年たちが思いやりの心を育むことを目指したりするそうです。
 最後に会議室に戻り、質疑応答をしていただきました。以前に実施した刑務所見学の知識を活かして「刑務所と少年院の類似点?相違点」に細かく切り込んでいくなど、参加した学生にとってとても充実した時間になりました。予定時刻を大幅に延長して約45分にわたって回答していただきましたが、それでも質問が途切れないなど、参加学生の非常に高い興味関心がうかがえました。

集合写真(愛知少年院正門前)

説明を受ける様子(愛知少年院会議室)

刑務所見学の成果を公表

2023/12/18

 9月に実施した刑務所見学で学んだ内容を資料としてまとめ、ウェブサイトで公開しました。資料は、法学部萩野ゼミのウェブサイト(https://haginoseminar.wixsite.com/haginoseminar)内の特設ページにあります。ご覧になりたい方は、ウェブサイトのトップページ右上にあるバナー「刑事施設等の見学」をクリックしていただければ、特設ページが見つかるでしょう。
 資料では、学生の視点から、「さまざまな学年の学生にとって、こういった情報があったら興味深い」と感じるものをまとめてもらいました。「資料を作成する中で、「見学時に学んだ内容」や「見学の振り返りの中で生じた検討課題」を明らかにすることができたと思います。
 資料作成にあたっては、見やすさや分かりやすさに重点を置いていますが、これらの資料の意義や目的は次の3点にあります。
 第1に、少年院や医療刑務所、女性刑務所などを見学した後に、この「刑務所見学」の資料と比較し、それぞれの機関の相違点について理解を深めるためのものです。
 第2に、このプログラムに参加するメンバーが変わる次年度の取組みを見据えた上で、その事前学習に用いるとともに、資料作成の到達目標とするためです。この資料を土台としつつも、ここに掲載されていない情報を新たに学び、資料や情報を蓄積していく予定です。
 第3に、「刑事施設を見学する際の注意事項」を示すことで、刑事施設の見学を予定している多くの皆さんの疑問を解消することを目指しています。たとえば、「刑事施設を見学する際にはどのような靴を履いていけばよいのだろう」といった素朴な疑問であっても、1つずつ解消していければと思います。

学習成果を公表するウェブサイト特設ページ

資料「刑事施設見学時の注意事項について」

資料「刑事施設見学の学習成果」

担当ごとにわかれて、資料を作成する様子

資料の最終チェックをする様子

播磨社会復帰促進センター見学

2024/01/31

 1月29日(月)から30日(火)にかけて1泊2日の日程で、兵庫県加古川市にある播磨社会復帰促進センター見学に行ってきました。同センターはPFI方式を導入した刑務所として発足しており、こうした刑務所は日本に4つしかありません。現在ではPFI事業を終えており、いわゆる「公共サービス改革法」に基づいて官民協働で運営されている刑事施設です。
 29日の9時すぎに大发体育官网_澳门游戏网站を専用バスで出発し、約4時間後に到着すると、まずは会議室で播磨社会復帰促進センターについて説明していただきました。施設の沿革や特徴についてのほか、収容対象者について、あるいは民間の技術を活用してどういった取組みをしているかについてなど、多岐にわたる内容を非常に丁寧に分かりやすく教えていただきました。
 その後、受刑者が収容されている区画を見学させていただきました(どの刑事施設も同様ですが、撮影は禁止でしたので写真はありません)。居室や調理場、運動場など、同センター内のさまざまな施設を実際に見ることができました。(刑務)作業については、センター内の数多くの工場を回らせていただき、受刑者の方が実際に作業に取り組んでいる様子を間近で見学することができました。たとえば、スマートフォン用アプリの開発を学んでいたり、介護職のための訓練をしていたりと、他の施設では見たことがなかった取組み内容に、参加者1人1人が強い興味関心をもっている様子でした。そのほかにも、ドローンを数人で操作する訓練をしてグループワークの大切さを学んだり、VR技術を使って就職活動の訓練をしたり、実際に調理師免許資格を取得する方などもおられるそうです。「民間の力を有効活用した取組み」を現場の様子から理解できた時間だったと思います。
 最後に、会議室に戻り、法教育の一環としての講義を受けた後に、質疑応答の時間を設けていただきました。事前にお送りしていた質問にも1つ1つ答えていただいたほか、当日の見学中に参加者が気になった点なども丁寧に回答していただきました。質問のための挙手が途切れないほど参加者は興味をもった様子で、各自が大きな学びを得たものと思います。対応していただいた皆様には深く感謝を申し上げます。
 16時すぎに見学を終えて参加者全員でレンタル会議室のある神戸まで移動し、(ホテルにチェックインを済ませた後に)事後学習会を開催しました。実際に資料を作成する作業は新年度に予定しているため、春季休業中に見学で学んだ内容を忘れないようグループごとにメモを作成する作業を行いました。話し合いも盛り上がった様子であっという間に時間が過ぎていきましたが、学習内容をしっかりとまとめられたと思います。
 30日の夕方に大学に戻ってきましたが、参加した学生の顔は充実しており、非常に有益な時間を過ごせたと思います。

播磨社会復帰促進センター入口

会議室で説明を受ける様子

集合写真

事後学習の趣旨説明や取組み内容を引率教員から説明する様子

事後学習のグループワークにおいて見学時のメモ等を見ながら学習内容をまとめる様子

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