Challengers' Action

小学生と一緒に体験し、考える、自然の大切さ。
苔テラリウムづくりからSDGs達成への貢献も。

山田有真 中川雅新

2023年01月26日

ブリッジ?プログラム(2年次以降プログラム)

子どもたちに五感で自然と触れ合う体験をしてほしい。そんな思いのもとに活動しているのが「名城自然交流倶楽部」。苔テラリウムのワークショップなど、身近な自然や環境問題への理解を深める機会をつくっています。2022年12月17日、ナゴヤドーム前キャンパスの社会連携センターで、矢田小学校の児童向けに開かれた苔テラリウム体験会の様子をレポートします。

記憶に残る自然体験を提供したい!

名城自然交流倶楽部は、チャレンジ支援プログラムを経て、2022年の春に誕生しました。メンバーは、法学部3年の山田有真さんと都市情報学部3年の中川雅新さんのふたり。「自然に関する活動がしてみたい」という点で共感し、チームができました。ふたりとも、幼い頃の体験が活動の原点にあるといいます。



山田さん:家族で虫とりをするなど、昔から自然が好きでした。小学生が気軽に楽しみながら自然を知る機会をつくれたらと考えたのが、この活動のきっかけです。

中川さん:五感全部を使った経験は記憶に残りやすいものだと思います。私自身、森でカブトムシを捕まえた時のことをはっきりと覚えていて。そういう体験を小学生に味わってほしくて、この活動に加わりました。



楽しく五感で自然と触れ合える体験とはどんなものだろう?具体的な活動内容を検討する中で、苔テラリウムと出会いました。苔とさまざまな素材を組み合わせてガラス瓶の中に自分達の空間をつくり上げる。その面白さをふたりも実際に体験した上で、子ども向けのワークショップとして成立させる方法を考えました。アイデアを固め、実践の場を探していると、社会連携センターから「イオン八事店でイベント出展してみない」と声をかけられます。ふたりはこの話を受け、学内でボランティアスタッフも募り、2022年9月、10月に苔テラリウムづくりの体験会を実施できました。



山田:体験会前には、苔テラリウムは盆栽のようにも見えるので、お子さんよりお年寄りに受けるのでは…と懸念する声もあったんです。けれど、イオンではたくさんのお子さんが楽しそうに参加してくれました。これなら小学校とコラボレーションしてもできる。自信を持って、次のステップへと進むことができたと思います。



体験会の成功を踏まえ、矢田小学校の児童向けの体験会を開催することになりました。

オリジナルの「SDGsカルタ」でさらに内容を充実

12月17日の体験会では、苔テラリウムだけでなく、新たにSDGsを学ぶ内容もプラスしました。イベントの前半で、山田さん、中川さんが、SDGsについて小学生に説明。その後、「SDGsカルタ」で遊び、説明された内容を復習しました。SDGsカルタは、ふたりが考えたオリジナルのもの。カルタの札をとりながら、SDGsの17の達成目標と自分たちが日常生活でできる取り組みを結びつけられます。参加者の小学生たちは、保護者の方々や学生スタッフと一緒に楽しみ、カルタでSDGsについて学びました。

山田さん:苔テラリウムだけでなく、独自のコンテンツをプラスしたいとSDGsカルタをつくりました。苔テラリウムも「陸の豊かさを守ろう」という、15番目のゴールに貢献できる活動です。SDGsと関連づけることで、私たちの活動の幅ももっと広げられます。植物に限らず、大きな視野で一緒に自然を守ってくれる人を増やすための新しい一歩になりました。



中川さん:SDGsの説明をしてみて、小学生に分かりやすく伝える難しさも実感できました。知ってほしいことがたくさんあります。スムーズに理解できる伝え方、聞きやすい話の長さなど、より良い内容に改善したいです。

みんなが楽しめる苔テラリウムづくりに

SDGsカルタに続けて、苔テラリウムづくりへ。つくり始める前に、ふたりから素材として使う苔についての説明がありました。苔の基礎知識、苔の種類など、学校でもなかなか聞けない詳しい話に、みなさん興味津々です。シッポゴケという、名古屋市で絶滅のおそれがあるとされている苔も用意されていました。身近にある自然に改めて目を向け、実物に触れてみる。まさにさまざまな感覚を活かして学ぶ機会になっていると感じました。



説明を受けた後、いよいよ各自で苔テラリウムをつくりました。ガラス瓶に土台となる土を敷き詰め、苔を丁寧に植えて、カラフルな石などで好みの装飾を施します。学生スタッフのサポートを受け、個性的なテラリウムができあがっていきました。細部までこだわり集中して作業に取り組む小学生の姿も見られます。

中川:イオンでの経験もあって、苔テラリウムづくりの進め方は徐々に良いものになってきました。苔の説明からテラリウムの制作へと移る流れもスムーズにできています。



山田:複雑な作業がある訳ではありませんが、年齢によってピンセットで苔を摘むのが難しいなど個人差はあります。うまく作業ができない人にどう対応するかは、スタッフ全員にしっかりと共有している点です。誰でも楽しく参加できる活動にしたいので。体験会を始める前に、スタッフが心がけることを確認する場をきちんと設けています。

リーダーとしての力を磨く

最後に、名城自然交流倶楽部での活動を通して、感じたこと、学んだことについてふたりに聞きました。



山田:ゼロから活動を起こしてみたくてチャレンジ支援プログラムに参加しました。高校までにはなかった経験ができています。団体をつくったりイベントを企画したりするプロセスがまったくイメージできていなかったので、具体的にその方法を学び、実践できているのは貴重な機会です。

活動をリードする立場になって、人を巻き込む面白さも実感しています。いろいろな人に協力をお願いして、自分が責任を持って活動を動かしていくのは初めてでした。ものごとをスムーズに進めるためには、先回りして考え、行動しなくてはいけません。そうした役割を担ってみて、自分がそれにやりがいや面白さを感じていることにも気づけました。取り回し役が比較的得意なのかもしれません。マネジメント能力を高められていると思います。

中川:このプログラムでは、自分がやりたいことを実現できます。なにかをしたいのに迷って二の足を踏む時もありますが、やらないのはもったいないと感じるようになりました。スタートを切るためのハードルが低くなりましたね。自分が動き出さないと誰もやってはくれない。動き出せば一緒にやってくれる人は出てくる。だったらまずは自分がやろう。そんな意識が身につきました。

他にも、グループディスカッションなどでの、周りへの伝え方が変わったと思います。納得感のある話をするために、必要な情報を盛り込んで説明する力がつきました。活動を通して、「こんなこともできるかも」と次々に挑戦ができ、自分の能力の上限をどんどん突き抜けられています。



新しいチャレンジの最初の一歩を踏み出すこと、そこに多くの人を上手く巻き込むこと。山田さん、中川さんは、名城自然交流倶楽部の実践で、リーダーとして大切な心持ちや力を磨いています。苔テラリウムからSDGsへと活動の可能性を広げつつあるふたり。小学生が自然を学び、体験する場づくりが、今後どのように展開していくか楽しみです。