育て達人第059回 土屋 照二

恵まれた農場資源の有効活用を   実習は自分で判断下す訓練の場

農学部 土屋 照二 教授(園芸学、農場実習指導)

 愛知県春日井市鷹来町にある附属農場は農学部発祥の地。教育の拠点は天白キャンパスに移りましたが、学生たちが作物や家畜に接することができる貴重な実習教育と試験研究の施設です。実習指導を担当する土屋照二教授に、附属農場での実習体験の意義などについて語っていただきました。

――本学就任時の「教員プロフィール」で、「もともと花好きで、気がついたら大学人。一人でも多くの人に花好きになってほしい」と自己紹介されています。いつごろから花が好きだったのですか。

「農場を訪れ四季の風景を楽しんでほしい」と語る土屋教授

「農場を訪れ四季の風景を楽しんでほしい」と語る土屋教授

 子どものころからです。出身は東京ですが、当時は東京でも原っぱはめずらしくありませんでした。知らない花がたくさんあり、いろんな種類の花を探し、咲かせる楽しさが魅力で、あちこち歩き回りました。魚の飼育も好きでしたので、大学の学部を選ぶ時は、水産系と園芸系のどちらに行こうか迷いましたが、やはり花の方を選びました。

――大发体育官网_澳门游戏网站附属農場の特色を教えて下さい。

 農場のある大学は全国で53大学あります。大发体育官网_澳门游戏网站附属農場は面積が約13万6000m2で、下から7番目くらいですが、栽培する花や作物、飼育する動物の種類が多いのが特色です。花だと100~150種類、果樹や野菜も30種類以上栽培しています。ニワトリやアヒルなど家禽類は30種類を飼育しており、採卵鶏の産卵性と卵質に及ぼす影響調査など特色ある調査を行っています。竹の種類も100種類と多く、大学農場としてはすばらしい資源です。国立大学が人員削減で農場の構成を単純化する傾向にあることを考えれば本学の農場は内容が充実しています。有効に活用するためにもきちんとした整備が必要です。地域との交流を目的として農産物の販売や園芸指導も行っています。

――附属農場の役割は何でしょう。

 もちろん教育と研究であり、教育の柱となるのが農場実習です。農学部では、農学を学ぶことで自然、生物、生命、人間の生存に深い洞察力を持ち、創造性豊かで実践力のある人材を育成することを教育の理念としていますが、その原点に触れるのが農場実習だと思います。農場実習授業が最も多い生物資源学科では、1年生は夏休み中に集中実習、春には泊まり込み実習もあります。最近の農学はバイオ、遺伝子などの先端科学が脚光をあびていますが、やはり原点は現場です。しっかりした観察に基づく決断が求められる栽培実習は、人生において、いろんな場面で自分で判断を下すための訓練の場になるはずです。

――農場では3月23日、植物栽培に関する基礎知識を学んだ市民たちを「植物栽培推進員」として認証する式が行われました。

 農場では地域との連携事業にも取り組んでいます。2007年度からは春日井市との連携事業として、農業の担い手となる市民のリーダーを3年間かけて育成するプログラムを設けて、市民の皆さんに学生と一緒に学んでもらっています。1期生の募集では200人近い応募があり、農業への関心の高さに驚かされました。今回1期生で推進員の認証を受けたのは9人ですが、受講時間数などの関係で認証されなかった方々も含め17人が「名城クラブ」という組織をつくり、春日井市市民活動支援センターに登録し、果樹園の管理などにあたっています。団塊世代の参加者も多く、旺盛な知識欲は学生たちにもいい刺激になりました。事業は2011年度まで継続されます。

――農場実習に参加する学生たちを指導していて、注文はありませんか。

 街で育った学生が多いせいか、実習に参加して感激する学生もいます。手の汚れも気にせず作業に夢中になっている女子学生も多く、土に触れる体験がとても新鮮なようです。将来、農業に従事しようという学生はほとんどいませんが、実習での体験を、生物生産、食料、環境などそれぞれの学びに役立ててほしいと思います。ただ、最近の学生たちはインターネット検索での情報収集に慣れすぎ、レポートの提出でも、明らかにネット情報をコピーしたような内容を書いてくる学生も見受けられます。貴重な実習を体験できることの意義を忘れずに、自ら学ぶことの意味を重く受け止めてほしいと思います。

――四季の風景に恵まれた農場は一般の学生が訪れても楽しそうですね。

 そうです。農学部以外の学生の皆さんもぜひ一度、農場に足を運んでほしいと思います。私の夢は農場内にセミナーハウスができて、多くの学生たちに宿泊合宿に利用してもらうことです。朝起きて、農場を一周して、さわやかな自然を楽しんでほしいと思います。野菜、果物、動物飼育の知識、ガーデニングに役立つ花の知識を得ることができますし、将来、教員を目指す学生にとっては動物飼育などを通じ、命の問題を考える体験が得られるはずです。学生時代を有意義に過ごすには、自分の興味や関心をどんどん深めていくことだと思います。農場を訪れることでも、そのきっかけが見つかるかも知れません。

土屋 照二(つちや?しょうじ)

東京都北区出身。千葉大学園芸学部卒、京都大学大学院農学研究科修士課程修了。博士(農学)。石川県立農業短期大学(現在、石川県立大学)助教授を経て1998年から大发体育官网_澳门游戏网站教授。99年度から2003年度まで附属農場長。NHKなどの園芸講座番組にも出演。64歳。

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