大学概要【2019年度実施分】地域のまちづくり活動(宿泊施設を活用した地域まちづくり)

理工学部

地域のまちづくり活動(宿泊施設を活用した地域まちづくり)
実施責任者:高井 宏之

近年新たな宿泊施設の業態として需要が拡大しつつある「宿泊施設型ゲストハウス」を中心に、わが国が直面する空き家活用?地域活性化の手段、インバウンド(訪日外国人旅行客)等の受け皿としての可能性を追求する実践的な取り組みであり、行政や住民とのワークショップによりこれからに向けた提案を行う。
なお、本事業は4年目の事業であり、昨年度は歴史的宿場町である『亀山市関宿』を対象とし基礎検討(続)、また地方都市を想定した視察調査を複数実施した。本年度は引き続き歴史的宿場町、地方都市、および過疎の進行する集落地域でのワークショップを実施する。また4年間の総括を行い、専門家とのディスカッションを行う。

ACTIVITY

地方都市のゲストハウス事例の訪問調査

2020/01/30

ゲストハウスA(岐阜県恵那市岩村町) 2019年11月19日訪問

0)岩村町の概要
?かつて岐阜県恵那郡にあった町だが、2004年10月に合併により恵那市となった。
?江戸時代は岩村藩領で、岩村藩と城下は廃藩置県まで三万石の城下町として栄えた。
1)まちの様子
?重要伝統的建築物保存地区に指定されており、江戸時代の城下町のたたずまいを味わうことができる。
?住民の方々の、まちの景観を大切にする配慮は随所に見られる。
?2018年度上半期放送のNHK連続テレビ小説「半分、青い。」の舞台となり、ロケ地となった。

歴史的まち並みが大変よく残っている

味わいのある外観と住民の配慮

2)施設概要
?客室:ドミトリータイプ2(男女ドミトリー?女性専用ドミトリー、共に8人部屋)、個室2
?設備:キッチン、談話室、シャワー、BBQガーデン、レンタサイクル
?開業年:2015年
3)開業の経緯
?有志が集まったまちづくり組織「ホットいわむら」を10年ほど前に結成。そのグループで空き家を何とかして購入し活用しようという話になった。
?メンバーで資本を出し合い、『株式会社え~ないわむら』を設立し、大正時代に元来染め物屋として使われていたが20年以上空き家となっていた建物を買い取りリノベーションし、2015年にゲストハウスとしてオープンした。
?味わいを残しながらも美しくリノベーションした町家建築。裏庭をバーベキューガーデンに、レンタサイクルも用意するなど若者のニーズに応えている。
?1階には寿司屋がテナントとして入っておりゲストハウス内で夕食も提供可能であるが、周辺の食事どころや銭湯とも連携している。

建物外観

入口を入ったところの土間空間

4)着目点
?JR恵那駅から明知鉄道で30分ほど入ったやや不便な場所に立地するが、かつて栄えた城下町の町並みという優れた観光資源を有し、その立地の不便さが、かえって訪問者にタイムスリップしたような別世界的印象を強く与え心地よい。

地方都市の分散型ホテルの訪問調査

2020/01/29

篠山城下町ホテル NIPPONIA(兵庫県丹波篠山市) 2020年1月8日訪問

0)丹波篠山市の概要
?丹波篠山市は兵庫県中東部に位置し、旧丹波国として古来京都への交通の要として古くから栄え、現在も町並みや祭りなどに京文化の影響を色濃く残している。
1)まちの様子
?2004年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、建物もよく保存されている。
?この地区外の商店街も味わいのある佇まいを見せている。

重要伝統的建造物群保存地区の町並み

商店街の町並み

2)施設概要
?客室:古民家7棟(計15室)が町全体に分散
?設備:上記うちの1棟に、レストラン(朝食、夕食)とレセプション(チェックイン?アウト等)
?開業年:2015年より順次開業
3)開業の経緯
?歴史的景観を守るという想いから出発し、古民家の「宿泊施設」としての活用、雇用の創出による若者の地方回帰、そして地域産業の創出という流れで展開してきた。
?一社ノオト(公益事業)、(株)NOTE(収益事業)、(株)バリューマネージメント(ホテルとレストラン運営)、および行政や地元に縁のある企業との協業し事業を企画?運営をしてきた。

施設配置図(NIPPONIAホームページより)

ONAE棟(レセプションとレストランあり)

NOZI棟(客室が2室)

4)着目点
?客室である古民家が町全体に分散しており、その中の1棟で顧客対応や夕食提供を行う、「分散型ホテル」の形をとっている。
?古民家は古い材料を活かしながら美しくリノベーションされ、NIPPONIAのロゴマークの入った暖簾が掛けられており迷うこともない。
?客室は一棟貸しの形態をとるものが多いため利用料金は少し高めだが、古民家の空間を楽しむ、地域の素材を生かしたフレンチディナーなど、まさに「まちに泊まる」感覚の高い価値を実現している。

地方都市の分散型ホテルの訪問調査

2020/01/30

谷中銀座商店街

まちやど協会 hanare(東京都台東区谷中) 2020年1月10日訪問

1)まちの様子
?谷中の墓地近くの閑静な低層住宅街で、地元商店街も近い。

2)施設概要
?客室:hanare 古民家のリノベーション1棟(5室)
?設備:HAGISO古民家のリノベーション1棟(レストラン+レセプション+ギャラリーほか)
?開業年:2017年より順次開業
3)開業の経緯
?2004~ 木造アパート萩荘を東京藝大の学生でアトリエ兼シェアハウスとして利用
?2011 東日本大震災をきっかけに解体の話があり解体の前にイベントを行ったが、建物価値が見直され、計画が一転しオーナーと宮崎晃吉氏(現まちやど協会代表理事)が一緒に金を出し改修
?2013 HAGISOがオープン
?2017 hanare開業、同時に同じようなことを始めていた人たちと、このような活動の定義のため、一般社団法人を作り、その時のコアメンバーで「まちやど協会」を設立

HAGISO(レセプション+レストラン等)

レストラン内観

レストランに隣接のギャラリー

hanare(宿泊棟)

4)着目点
?「まちやど協会」の活動が着目に値する。
?まちを一つの宿と見立て、宿泊施設と地域の日常をネットワークさせ、まちぐるみで宿泊客をもてなすことで地域価値を向上させていう取り組みである。
?「分散型ホテル」の原点とも言うべき活動であり、正会員は考え方を共にする宿泊施設の事業者、理事はリノベーションスクールの仲間である。
?リノベーションスクールでの活動時の宿泊施設の企画?運営の受け皿となっている。
?広報活動から具体的な取り組みへと段階が移行してきた。
?なお訪問時に、まちやど協会代表理事の宮崎晃吉氏にお話を伺ったが、この内容は別の機会に紹介する。

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