特設サイト第75回 漢方処方解説(36)真武湯

12月の声を聞くようになって、ようやく冬の空気となってきました。朝、布団から出るのが少しずつ辛くなってきてはいませんか? とはいえ、日中はまだまだ気温もある程度高く、過ごしやすい日が続いています。

さて、今回ご紹介する漢方処方は、真武湯(しんぶとう)です。
日本薬局方に収載されている漢方エキス37処方の一つで、「冷え」と「消化機能低下の改善」を中心として、冷え症で虚弱な者の諸症状に用いられています。
構成生薬は、茯苓(ぶくりょう)、芍薬(しゃくやく)、生姜(しょうきょう)、朮(じゅつ)、附子(ぶし、加工ブシ(修治ブシ))の5つです。それぞれ、茯苓と朮は水分代謝障害の改善に、芍薬は鎮痙、生姜は健胃などに働き、附子は冷えや基礎代謝低下の改善に働くとされています。中でも、附子はキンポウゲ科のハナトリカブトやオクトリカブトの塊根を用いる生薬で、高圧蒸気処理などによる加工を加え、「加工ブシ」や「修治ブシ」として用います。いわゆるトリカブトの根は有毒ですが、加熱することによって、その毒性は低下し、「温める」生薬として利用しております。

  • 真武湯の構成生薬
    (※2)真武湯の構成生薬

本処方は、体質として、やせ型で体温が低く、身体全体が冷えて、体内の水分代謝異常があるため、浮腫やめまい、下痢などの症状がある場合に用いられます。とくに、下痢の場合、消化不良の水様便であることが多く、腹痛は少ないものの、排便後にダルさを感じることが目標となります。また、とくに高齢者の明け方の下痢(鶏鳴下痢(けいめいげり)と呼ぶ)に良いとされています。興味深いですよね?
また、(※1)感冒(かんぼう)にも応用され、発熱しても顔色が悪く、悪寒や手足の冷えや倦怠感を強く訴える場合に用いるとされています。
本処方の名称は、四神の一つ、北を守護する黒い亀、「玄武」に由来します。東は「青竜」、西は「白虎」、南は「朱雀」であり、それぞれ由来する漢方処方がありますが、どれなのか想像できますでしょうか。いくつかは、この漢方随想録でもご紹介したと思います。探してみて下さい。

(※1) 感冒:呼吸器系の疾患の総称。かぜ。

(※2) 写真では、加工ブシとして炮附子(ほうぶし)を載せています。朮(じゅつ)には白朮(びゃくじゅつ)と蒼朮(そうじゅつ)の二つの生薬があり、メーカーによって使い分けされています。ともに、胃腸を助け、気を巡らす作用をもちますが、日本漢方では蒼朮の方が水分代謝を改善する作用がつよいとされています。

(2020年12月2日)

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